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チベット応援団ブログ 直子デチェンさん(チベット語&仏教研究者)

タシデレ!

チベット応援ブログ、第4回のゲストはチベット語&仏教研究者の直子デチェンさんです。直子さんは1999年にインドダラムサラを初めて訪問。その後3年間のチベタン・ライブラリー学生生活の後、 2003年からダラムサラ仏教論理大学を聴講。チベット語通訳の経験もあります。ダラムサラで出会った人々から教えられたものとは。直子さんのチベットへの思いに迫っていきます。

チベット仏教を求めてダラムサラへ

私は1回死んだ

どのような経緯でインドのダラムサラにいくことになったのですか?

父親がぬいぐるみのデザイナーで、その仕事の手伝いをしていたんですね。だけど、その仕事が好きではなかったので心が病んでしまいました。当時はすごい心が狭くて、或る日『自分は一年後に死ぬんだ』って思っちゃったんです。でも死ななかった。当たり前だけど(笑)。その後仕事を辞めたときには、自分は一回死んだんだと思ってました。

死んじゃったし、でも時間もあるなら何するかなとなったときに、私は仏様の話が好きだったので、仏様の教えはどの国の言葉で一番残っているのか知りたくて調べたんです。そしたら、チベットの言葉で一番残っているとわかりました。じゃあチベット語で仏教の勉強だと。

それで、新宿のチベットハウス、法王事務所さんに伺って、「チベットの仏教を勉強したいから。チベットへ行ったほうがいいですか?」って訊いたんです。すると、チベットに行っても仏教の勉強はできないから、ダラムサラに行きなさいと。ダラムサラにだったら、図書館もあるし、外国人向けの仏教の入門のクラスがあるから、そこに行ったら勉強できるよって教えてもらって、それでインドに行くことにしたんです。

自分は気が狂っていると思っていた

チベット仏教に導かれた経緯を教えてください

日本にいたときは、あまり人の役に立ってこなかったから、人生最後の一年間設定のあいだは、できるだけ人の役に立つことをしようと思っていました。当時ピュアだった私は、自分はどうなっても構わないから、誰かの役に立つことをしたら、それが一番いいことだと思っていたんですね。

だけど、私が読んだ限りの日本の本は、どれも「それは最終的には自分の為」と書いてあった。いいことをしましょう。役に立つことをしましょう。それはすべてあなたの為ですという着地点の本ばっかり。だから自分を捨てて、全てを他者の為に捧げるのがいいと考えている私は気が狂っているのだと思っていたんですね。

だけど、インドに行って仏教の話を聞いていたら、私が思っていたことを言っているんです。だから自分は狂っているんじゃなかったと思えたわけです。

そこからチベット語や仏教の勉強をしていきました。私の中ではチベット仏教が一番体系的で実践的、内容にアクセスしやすい教えだったんです。

チベット人は自分のことを嫌わない

ダラムサラを拠点にチベット人の方々と過ごされてきて、印象的なことはありますか?

私が感じたのは、強さです。しかも、本当に優しい人が強いということです。

人に柔らかく接するとか意地悪しないというのは誰でもできます。でもその優しさや穏やかさの裏で、どれだけチベットの人が努力や苦労をしているのかは、自分からは言わないのですね。みんながものすごく苦労して、頑張っているから私も頑張るみたいなね。その上で人に優しくできる強さなのです。

もう一つは、自己肯定感の強さですね。日本人は、「自分のこと嫌いです」という人が多いじゃないですか。彼らは自分のことを嫌いっていうことがない。自分のことをすごく信じているから。良くも悪くも突っ走りますね。自分を肯定しているから、すごく個性が豊か。

チベット語でしか表せない宝の言葉に触れてほしい

これからやっていきたい活動はありますか?

生き方や、人としての強さは、どの民族でも必要じゃないですか。私の場合は、チベットのお坊さんやチベット人と一緒に居ることで感じることができた、人間的な強さであるとか、チベット仏教の中でチベット語でしか的確に表せないことを伝えていきたいと思っています。

チベット語が読めればすごくいいと思うんです。世の中のあり方の認識の仕方が、ある意味ひっくり返るような話なんかがあったりするから。勉強するのは大変って思われるかもしれないけれど、チベット語一つ知るだけで凄いことがわかる。お経に書いてあることの意味を知るっていうことだけでも、すごくありがたいことだと思います。

人ってね、それぞれ経験が違うじゃないですか。だから一つの言葉を聞いても、それから受け取る意味や感じ方が違うんです。だから、自分でオリジナルにアクセスしなきゃダメなんですよね。

信じることで人は強くなれる

タシデレに来る人に向けて、チベットに関わってよかったことは何ですか?

信じることがどれだけ人を強くするかを学んだことです。チベットといえば、ダライ・ラマ法王様ですよね。チベットの人は、仏教が心に沁みついている。何か信じるものがあると人は強くなります。

日本人の場合はね、自分はいいと思っているけど、周りがやっていないからできないということもたくさんあります。例えば、お年寄りに席を譲った方がいいとか、道に落ちているゴミを拾った方がいいとか。だけど、周りがやってないから、それをやるのが恥ずかしいとか、見られて居心地が悪いとかね。

そういう時に、自分の信じるものが強くあって、それをみんなも信じていて、確立した倫理観や善悪の基準というものがあったら、人は強くなれるんです。自分に素直に、これはいいことだよね。だからそれができるという。そういう状態になれるんですよ。

私のチベット料理「ツァンパ」

最後に、印象的だったチベット料理を教えてください。

何といってもツァンパでございます。

ツァンパは大麦や裸麦の粉っていうイメージがあるじゃないですか。でも、麦だけじゃなくて、煎って粉にしたものをすべてツァンパというらしいです。チベットから送られてくるツァンパには豆のものもあります。聞いた話では、黒大豆のツァンパの方が、麦よりも栄養があるから、道路を作る人や、肉体労働する人が好んで食べるそうです。

あと、細かいツァンパとフワフワのツァンパがあって、細かいのは麦を洗って乾かして煎ってそのまま作るんだけど、フワフワの方は手間がかかるんです。その分、空気が入って柔らかくて食べやすく、消化もよくてお腹にもたれないツァンパになるんだそうです。 

チベットに触れて人間の優しさや強さを感じた直子さん。柔らかく、でも強い印象に残るそのお話に、直子さんの揺るぎのない信仰を感じることができました。

直子デチェンさん、ありがとうございました!

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直子デチェンさん プロフィール

直子デチェン
1970年千葉県出身。 1999年初渡印。
ご縁に導かれて仏教を勉強することになり、3年間のチベタン・ライブラリー学生生活の後、 2003年からダラムサラ仏教論理大学を聴講。 2016年全科目履修終了。
最近はブログ https://note.com/dechenblog で、のんびりしたインド生活、旅日記、身近な仏教話をつらつら記す。
『中論』『ブッダパーリタ(仏護註)』『顕句論』『正理の海』翻訳。
https://www.dechen.jp/ で公開。
Facebook https://www.facebook.com/dechen.naoko

 
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“チベット応援団ブログ 直子デチェンさん(チベット語&仏教研究者)” への1件のコメント

  1. 牧野ひとみ より:

    私はダライラマ14世がお元気なうちにひと目だけでもお会いしたいという夢があります。
    今。世界中が戦争になってきて、日本もとうとうその準備に入りました。私は今のうちに自分の生涯のうちにやりたかったことをしようという気持ちになりインドの聖地まで出向こうかと思っています。

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